クラシック音楽まとめーバレエ音楽編ー
クラシック音楽の中でも、バレエ音楽は独特のジャンルです。伴奏として踊りやすく作曲されたものから、聴くだけでも楽しめる作品まで様々です。今回はそんなバレエ音楽の中から、聴くだけでも楽しめる曲をピックアップしました。
1.《くるみ割り人形》より「花のワルツ」/ チャイコフスキー
バレエ《くるみ割り人形》は、映画化もされたクリスマスのファンタジー。音楽も幻想的な雰囲気で気分を盛り上げてくれます。「花のワルツ」は物語の終盤で、花の精たちが舞台いっぱいに踊る豪華なワルツです。序盤のハープによる幻想的な前奏から、華やかなワルツへとなめらかに吸い込まれていき、主題が提示されてからも、いろいろな楽器が活躍し、飽きることなく聞き続けることができます。
2.《白鳥の湖》より「ワルツ」/ チャイコフスキー
バレエの代名詞ともいえる《白鳥の湖》。彼がはじめて作曲したバレエ音楽ですが、それまでのバレエ音楽の伝統にしたがいながらも、オペラや交響曲を発想するのと同じような手法で楽曲を構成するという、革新的な作品になっています。特にこの第1幕でのワルツは、形式、旋律、楽器法、リズム、調性配置など、さまざまな要素で工夫が見られます。これらの改革は、ロシア語で「シンフォニザーツィヤ」(英語なら「シンフォ二ゼーション」)と呼ばれ、それまでのバレエ音楽と区別されています。チャイコフスキーは、このワルツを作曲した当時、交響曲を3つ仕上げていたため、その手腕を大胆にバレエ音楽に応用できたのでしょう。
3.組曲《眠れる森の美女》/ チャイコフスキー
《白鳥の湖》から13年後に作曲された《眠りの森の美女》。上の2曲と合わせて「3大バレエ」とも呼ばれます。振付を担当したバレエマスターのマリウス・プティパは、チャイコフスキーに対して音楽の調性や拍子、素材の長さなどをこと細かく指示したといわれていますが、彼はそれを見事に音楽として再現しました。バレエとしては、音と動き、ストーリーすべての一致性が高い作品ですが、音楽だけを聴いていても、物語のワンシーンが浮かんでくるような楽曲です。冒頭の怪しげな主題は、悪の精カラボスのメロディーで、この作品中で、カラボスがでてくるたびに演奏されます。このような音の演出が、この作品の魅力です。ワルツも上記の2作品と同じく秀逸で、力強さと気品が共存しています。
4.《コッペリア》/ レオ・ドリーブ
チャイコフスキーがロシアで活躍する少し前、フランスではロマンティック・バレエというスタイルが興亡していました。そこでの代表的な作曲家がレオ・ドリーブです。彼は教会オルガニストなどの職を経て、パリ・オペラ座の専属作曲家となりますが、チャイコフスキーが認めるほどの実力で、彼もまた、交響曲やオペラの手法をバレエ音楽に取り入れ始めた1人でした。この《コッペリア》という作品は、自動人形コッペリアに青年フランツが恋をするドタバタ喜劇ですが、E.T.A ホフマンの《砂男》という怖めのロマン派小説が原作とされています。音楽はスケールとしては小ぶりでありつつも、優美さや牧歌的なやさしさが感じられ、聴けば聴くほど味わい深い仕上がりです。
5.《シルヴィア》/ レオ・ドリーブ
「フランスバレエ音楽の父」と称されるレオ・ドリーブの作品で、前述のコッペリアとともに有名なのがこの《シルヴィア》という作品です。《シルヴィア》はコッペリア初演の6年後、1876年に初演されました。1870年の普仏戦争により、パリは文化的にもダメージを受けましたが、この年にはオペラ座にガルニエ宮という新たな建物が完成し、《シルヴィア》がその会場でのこけら落としとなりました。原作はイタリア詩人T.タッソの田園詩劇『アミンタ』で、羊飼いアマントが、女神ディアナに仕えるシルヴィアに恋をするという筋書きになっています。音楽的にはコッペリアよりさらに進化した要素が感じられ、特にホルンやベースラインなど、楽器の使い方は秀逸です。この作品中の「バッカスの行列」は、吹奏楽でもよく演奏される人気の高い曲です。
まとめ
いかがだったでしょうか。バレエ音楽も「舞台作品だから…」と敬遠せずに聞いてみると新たな発見があるかもしれません!